#07

技術とひと

2025.11.06

安全・保守管理群 環境安全グループインタビュー

安全・保守管理群(以下、安全群)は日々の研究活動を支える業務が中心のため、成果が見えにくい特徴があります。環境安全グループは教育・研究活動において事故を未然に防ぎ、健康被害の発生を防止することで、安全・安心な環境の整備に寄与する業務に携わっています。今回は、多元物質科学研究所(以下、多元研)所属でSRIS棟(国際放射光イノベーション・スマート研究棟)に常駐の川本グループ長(兼安全衛生管理チームリーダー)と、工学研究科所属で環境保全センターにて主な業務を行っている菊池化学物質管理チームリーダーのお二人に、業務内容の紹介やどのように安全衛生管理にあたっているかお話を伺いました。

安全を守る不断の努力

普段の業務や活動について教えてください 川本 現在の主な業務は、「青葉山新キャンパスのSRIS棟の安全管理」、「安全群に関する業務」、「新たな化学物質規制に関する専門部会ワーキンググループ(WG)への参画」の3つです。この中でも特に力を入れているのは、「安全群に関する業務」です。具体的には、チーム研修を実施し、安全衛生管理業務に従事する職員のスキルアップを図るとともに、交流の場を設けること、次世代のチームリーダー・グループ長を育成することを念頭に取り組んでいます。

安全衛生管理チームには、他チームとの兼務、再雇用職員を含め、7部局10名のメンバーが所属しております。また、東北大学は、安全衛生管理チームや安全群に所属していない職員も巡視などの安全衛生管理業務に従事しています。


菊池 私は青葉山の環境保全センターの実験廃液や廃液管理システムの支援業務と工学部にあるセンタースクエア等(以下、CS等)担当安全衛生管理者としての支援業務を行っています。

環境保全センターは現在センター長などの教員3名、事務職員2名、技術職員3名、計8名で全学の実験廃液処理と下水排水の管理業務を行っています。私が担当している実験廃液処理は、2020年までは学内の燃焼炉で廃液を自前で処理していたのですが、老朽化で廃炉となり、現在は外部委託となりました。以前は私も燃焼炉や実験装置の安全管理に携わっていたのですが、今は委託業者、研究室と部局事務職員と協力して廃液の適正処理に努めています。また、廃液管理支援システムの運用管理や利用者からの質問の回答などの対応をしています。

CS等担当安全衛生管理者としては、安全衛生委員会の準備や開催、各種届出関係の提出依頼、職場巡視において研究室・事務室の安全衛生における改善指導を行って事故防止などに努めています。

 

安全管理業務に必要な資格はどのようなものがありますか? 菊池 細かく言えば、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者やエックス線作業主任者など、特定の作業や装置に対応するための資格が必要になる場合もあります。

川本 そうですね。ただ、最低限「衛生管理者」の免許を持っていれば、業務に必要な知識の大部分は網羅できると考えています。衛生管理者の資格を取るための勉強範囲は非常に広いですから、まずはこの資格があれば、安全衛生管理の業務はこなせると思います。

 

現在の業務で課題に感じていることはありますか? 菊池 職場巡視ですね。複数の建物の安全衛生管理を一人で担当しているので、きちんと全体をカバーできているか、常に不安があります。巡視項目は自分でチェックリストを作って行っていますが、本当に十分な内容なのか、抜け漏れがないか、と悩むことも多いです。

 

巡視はどのように行っていますか? 菊池 事前に事務の方や研究室の先生にご連絡をして巡視日を調整し、当日は一人で伺って、各部屋で説明を聞きながら、中を確認させてもらいます。法令で「衛生管理者による週に1回の巡視」が義務付けられているのですが、巡視先が非常に多いので、一つずつ丁寧に回っていくと、一年かけてようやく一巡するようなペースですね。

産業医巡視については、部局巡視の様子をビデオで撮影し、その内容を工学研究科等安全衛生委員会(以下、安全委員会)で産業医の先生に確認してもらって意見をいただく「委員会巡視」という形で行っています。以前は、安全委員会の委員が大勢で巡視を行っていたのですが、コロナ禍以降はこの形に変わりました。


川本 私は以前医学部で主に産業医巡視に携わっていたのですが、例えば動物実験施設を半日かけて巡視するなど、一回の巡視にかかる時間がすごく長かったので大変でしたね。忙しい産業医の先生の負担を減らすため、写真撮影やフォーマット作成等、色々こちらでできることは行って報告書作成の効率化に取り組んでいました。

多元研では、産業医の先生がご自身で現場での写真撮影から、報告書作成までされるというやり方が昔から受け継がれており、同じ大学内でも部局によってこんなに違うんだなと、とても新鮮に感じました。


 

巡視も大学内で差があるのですね。部局ごとの安全に対する意識や安全教育の違いについてはどうでしょうか? 菊池 工学部は部局全体でというより系によっても熱心さが違うかもしれません。研究内容が多岐にわたるので、系ごとに独立して分けていかないとうまく成り立たないのではと思っています。系間での情報の共有ややり取りはあまりないように感じます。

川本 多元研は新規採用職員向け、研究室代表者向け等、対象を分けたものを実施していて、代表者の方が安全講習で出た話を研究室に持ち帰って研究室で安全教育をするという仕組みが出来上がってるんですね。熱心な研究室はそこで、こういうこと気を付けてね、こういうことあったよっていう話をするので、安全の意識も高まってきますし、事故の防止にも役立っているのかなと。安全教育のやり方一つにしても部局間の差は大きいと感じるため、学内異動した教職員が、異動前後で巡視や安全教育の方法などが異なることに違和感を覚えるのではと考えます。このようなことを避けるためにも、全学で統一したルールを策定し、そのルールのもとに安全教育を実施するのが理想と考えます。本学では安全教育の電子教材を作成しているので、まずはそれを活用するところから始めれば、各部局ともスムーズに新たな制度に移行できるのではと思っております。

 

変遷に立ち向かう

「化学物質の自律的管理」が2024年4月から全面施行され、東北大学のマニュアル等の制定にも技術職員が携わっていると聞きます。制度への取り組みについて教えてください。 川本 環境・安全委員会 安全管理専門委員会の新たな化学物質規制に関する専門部会の下部組織にWGがあり、そこでこの制度への対応を進めています。これまでは各部局でそれぞれリスクアセスメントを行っていたのですが、この「自律的な管理」の導入に合わせて、全学で統一したルールを作ろうということになりました。WGで議論を重ね、親委員会で承認を得てから、全学に周知するというプロセスで進めています。ただ、開始から数年経ちますが、なかなか皆さんに方針をお示しできていないかなっていうところはありますね。大学は少量多種の化学物質を扱うため、全ての物質にリスクアセスメントを適用すると、研究活動に大きな支障が出るのではという懸念が教員側からありまして。先生方の負担をどう最小限に抑えつつ、対応を進めていくかが大きな課題で、なかなか進捗していない部分もあります。

菊池 今年度入ってすぐくらいに「国立大学法人東北大学 自律的な化学物質管理の実施マニュアル」の策定について通知がありましたよね。事業場内での体制整備や、化学物質等のリスクアセスメントの実施方法などが具体的に書かれていて。今まさに、その新しいリスクアセスメントに関する説明会が開催されているところです。

川本 説明会や講習会ですとかこちらから積極的に働きかけても、参加してほしい方に来ていただけないこともありますよね。そこをどう巻き込んでいくのかっていうのはまあ、課題ですよね。法令で決まっていることもありますし譲れないところもあります。法令や制度を守るのは自分や研究室のメンバーを守ることになります。地道に声をかけ続け、ご理解いただく努力をしていきたいと思っています。
 

 

 

「自律的管理」が導入され、大学でも安全管理のあり方を自ら考える機会が増えました。今後、PI棟※のような新しい施設が増える中で、特に気を付けておくべきことは何でしょうか?
(※Principal Investigator(PI)=研究者が研究責任者として独立して研究を行うための拠点であり、最先端の研究環境が整備された施設。現在、各キャンパスに建築、整備が進んでいる)
川本 設計段階から安全管理担当者の意見を取り入れることが重要だと思います。これまでの経験から、ドラフトの配管や流し台、緊急シャワーといった安全設備が、建物設計時に考慮されず、後から問題になるケースを多く見てきました。事前に計画して、事務の方々としっかり話し合っておかないと、入居してから困ることになります。

菊池 研究室が変わって研究内容が変わると必要な設備も変わるじゃないですか。今までなくてもよかったのに研究室が入れ替わって急に化学物質や高圧ガスを使うことになったとか、そういう場合の設備を整える難しさもありますよね。入居する研究室が事前に分かっていれば、どういった研究をしたいのかをヒアリングし、必要な設備をあらかじめ把握しておくことが大切ですね。

川本 PI棟でも今後増えると思うのですが、SRIS棟は複数の部局が混在していたり他大学に籍を置く先生がいらしたりなど、所属が複雑で安全管理の難しさがあります。部局や大学ごとにルールが異なるため、現場では混乱が生じやすく大変です。マニュアルなどを共通化し、同時に私たち職員のスキルアップを通じて、安全管理のレベルを均一にしていくことも大切だと考えています。

 

次の世代の技術職員へ 経験という財産を

これまでの業務で達成感を得られたことや、逆に二度としたくないと思った経験はありますか? 菊池 大変だったのは昔の燃焼炉があった時ですね。老朽化していたので、日々何かしらトラブルが起きていました。メーカーに依頼を出すと高額になってしまうので、故障が起きないように日頃のメンテナンスなどを大事にしていました。また、できる範囲内でオーバーホールをするようにし、手作業のところは泥んこまみれになりながら、自分で機械を分解して直して使用していたっていう感じですね。

良かったことは、2008年に危険物質総合管理システム(IASO)が導入されたことです。IASOは薬品・高圧ガス・廃液の三つのシステムで成り立っているのですが、私は廃液管理支援システム(IASO W)の部分を担当しています。システム導入前までは実験廃液の処理依頼等をほとんどが手書きの紙媒体で手続きをしていたので、廃液タンクに投入した内容物の1物質ごとの記録を確認するのに大変な手間が掛かっていました。廃液処理業務を簡便化させて廃液情報(投入履歴や廃液回収および処理状況)や記録(登録・集計)が一元的に管理されるようになり、効率よく作業することができるよう改善されて便利になったことを記憶しています。更に2018年にIASO Wのバージョンアップでシステム更新時の仕様変更などに携わり、システムが稼働するまでの期間や説明会開催等々色々と大変だったことを思い出します。

 


実験廃液処理施設のメンテナンス(排ガス処理装置の分解点検、内部洗浄、活性炭入替など)

川本 私は異動する直前に長らく塩漬けにされていた問題が発覚し、部局長、室長や室員をはじめとする教員の協力を得て解決したことが印象に残っています。初めて話を聞いた時にはどのように解決を図ればいいのかが全く見えませんでしたので、まず、問題が発覚した経緯、現状等をまとめた資料を作成のうえ室員に相談しました。相談した結果、部局長、室長が出席する打ち合わせの議題とし、問題を認識していただくこととしました。部局長、室長が問題を認識してからは解決に向けて話が一気に進み、無事に解決することができました。この件で学んだ、難しい案件は速やかに上司へ報告し判断を仰ぐこと(報告しても上司は責めません)、上司が判断する際にわかりやすい資料を作成すること、などを心に留め日々の業務を遂行しております。

 

安全群は研修がたくさん行われていますが、若手の育成についてはどうですか? 川本 私が企画・運営している研修では、グループワークを多く取り入れています。上から教えるのではなく、受講者自身に「一緒に考えてもらう」ことを大切にしているんです。受講者同士が交流してネットワークを築くことで、互いの悩みを共有したり、解決策を見つけたりできるようになる。それが最終的に個々のスキルアップにつながると考えています。経験を一つ一つ積み重ねて、自分のものにしてもらいたいんです。私自身としては、若い職員にはこれから東北大学の安全管理を担っていく上で、「自分はここが大事だ」という点を見つけて、私のやり方を「自分ならこうするな」という目で見て反面教師にし、次に活かしてもらえれば嬉しいです。

菊池 保全センターでは若い人がいないんですよね。技術継承をどうしていくかが大きな課題だと感じています。私自身も年齢を重ねてきて、特にそのことを考えさせられますね。

川本 私たちが経験したことを次世代に伝えるのってすごく大事だと思うんですよね。それがあるからこそ、すぐ解決できるってことがたくさんあるので、やっぱりノウハウを伝えていくっていうのが大事だと思います。
 


研修の様子(2024年度、多元研 安全管理室にて『居室の安全衛生管理』に係る研修)
 

 

最後に業務を行う上で、日頃から大切にしている姿勢や心がけはありますか? 川本 安全管理の仕事はどうスムーズに相手のご理解を得て対応を進めるか難しいところがあるのですが、研究室の協力なしには成り立ちません。ですから、好き嫌いを出さずに、さまざまな先生方や研究室と連携していくことが重要だと考えています。自分の忙しさや苦手意識は相手に関係のないことですので、相手に不愉快な思いをさせないよう、どんな時でも思いやりをもって変わらず丁寧に接することを心がけています。

菊池 事故なく普段の業務を円滑に遂行し、問題解決をスムーズにするために、委託業者さんを含む部内全体でコミュニケーションを図ることを大事にしています。毎週一回、廃液回収の現状を打ち合わせる場を設け、問題の共有を行っています。廃液には危険なものも多いので、処理側の安全のためにも研究室側にルールをもっと浸透させたいですね。実験廃液の学内ルール(実験廃液の廃液量や内容物に相違、運搬時の廃液タンクの転倒防止対策)について定期的にメールなどで周知徹底するとともにポスターを作成して各研究室に配布、現地で口頭指導するなど対応していますが、なかなか難しく、どうしたら浸透するか悩んでいるところです。昨今は通知文やポスター、相談フォームにも英語での対応を要求されることが増えているので自分自身の英語力のスキルアップが必要と感じています。変化する状況に柔軟に対応できるようにしたいですね。

 

撮影・取材:広報担当部会取材班(2025.8.21)

Profile

  • 川本 美智子
    かわもと・みちこ
    安全・保守管理群 環境安全グループ グループ長 兼 安全衛生管理チーム チームリーダー
    多元物質科学研究所(SRIS棟)
    福島県出身 2009年度採用
    医学系研究科にて遺伝子組換え・動物実験関係業務、安全衛生管理関係業務の担当を経て、2015年度から多元研で安全管理関係業務を開始、2025年4月からSRIS棟の安全管理を担当に
    研修による職員のスキルアップや育成に力を注ぐ
    趣味は旅行、スポーツ観戦、推し活

Profile

  • 菊池 都士
    きくち・さとし
    安全・保守管理群 環境安全グループ 化学物質管理チーム チームリーダー
    工学研究科
    岩手県出身 2010年度採用
    実験廃液管理支援業務、廃液管理支援システム支援業務、CS等担当安全衛生管理者
    趣味はスポーツ観戦(地元にクラブチームがあることもあって特にラグビー観戦)

Profile

  • 安全・保守管理群